指数対応単価(レバーレート)とは|工賃単価の決め方と板金見積への影響

板金塗装の見積で、同じ作業なのに工場ごとに工賃が違う理由の大半は、指数に掛ける単価の違いです。指数対応単価とは、事故車の修理工賃を計算するときに指数(標準作業時間)へ掛ける、1時間あたりの工賃単価のことです。保険修理では、この単価を損害保険会社と話し合って決めるため、自社の単価に根拠を持てるかどうかが工場の収益を左右します。この記事では、国土交通省、日本損害保険協会、金融庁が公開している資料をもとに、指数対応単価の意味、工賃の計算式、自社の単価の決め方、根拠資料の作り方、損害保険会社との協議の進め方を整理しました。具体的な金額の相場は、確認できる一次情報が無いため載せていません。

この記事で確認した一次情報

指数対応単価とは(1時間あたりの工賃単価)

指数対応単価とは、事故車の修理工賃を計算するときに、指数(作業ごとの標準的な作業時間)に掛ける1時間あたりの工賃単価です。国土交通省が令和8年6月に公表した「事故車修理の標準作業時間 調査結果」は、一般的な修理工賃の算定方法を「工賃=指数×指数対応単価」と示し、指数を各作業の標準的な作業時間(単位:時間)、指数対応単価を損害保険会社と事業者が交渉して決定する1時間あたりの工賃(単位:円/時間)と説明しています。金融庁が令和6年2月に公表した「工賃単価に関する調査結果」も、工賃単価を「事故により損傷した自動車の修理費用を算出する際に参照する金額(1時間あたりの単価)」と定義しています。指数は全国共通の時間なので、同じ作業でも工賃に差が出るのは単価の違いによるところが大きくなります。指数を作る株式会社自研センターは、指数対応単価をはじめ、レバーレート等の工賃の設定や算定には関わっていないと公式のQ&Aで明記しています。

用語意味(一次情報の記載)誰が決めるか
指数各作業の標準的な作業時間(単位:時間)自研センターが策定する自研指数が広く使用
指数対応単価1時間あたりの工賃(単位:円/時間)損害保険会社と事業者が交渉して決定(保険修理の場合)
工賃指数×指数対応単価上の2つから計算

レバーレートという言葉も、工賃の単価を表す言葉として使われます。自研センターのQ&Aは「指数対応単価をはじめ、レバーレート等の工賃」と並べて書いており、日本損害保険協会のガイドラインも、工場から提示される根拠資料の例として「自社としてのレバーレートなどの根拠資料」を挙げています。指数の仕組みは自研センター指数とはで解説しています。

指数対応単価で工賃が変わる仕組み(計算例)

指数対応単価が変わると、同じ指数の作業でも工賃は単価に比例して変わります。工賃は「指数×指数対応単価」で計算するため、指数が同じなら、単価を何パーセント上げたかがそのまま工賃の増え方になります。たとえば国土交通省の調査資料では、トヨタ ヤリスのフロントドアの塗装(新品パネルの塗装と隣接部のぼかし)について自研指数を6.4時間と示しています。この作業の工賃は、6.4に自社の指数対応単価を掛けた金額です。単価が3%上がれば、この作業の工賃も3%上がります。逆に、単価が据え置かれたまま人件費や材料費が上がると、1件ごとの粗利は少しずつ削られていきます。単価を登録して指数から技術料を自動で計算する板金見積ソフトでは、単価の設定を誤ると、すべての見積に同じ誤差が載ります。

項目内容
工賃の計算式工賃=指数(時間)×指数対応単価(円/時間)
例:ヤリス フロントドア塗装の自研指数6.4時間(国土交通省 調査資料の比較表)
単価を3%上げたとき同じ作業の工賃も3%上がる
指数に含まれないもの工具、消耗品、材料代、産業廃棄物処理費(自研センターの指数Q&A)

指数は作業時間なので、材料代や産業廃棄物処理費は単価とは別に計上します。単価にこれらを混ぜてしまうと、損害保険会社に根拠を説明するときに費用が二重に見えるおそれがあります。見積全体の組み立て方は板金塗装の見積の作り方をご覧ください。

指数対応単価の決め方(自社の費用構造から考える)

指数対応単価は、自社の費用構造を分析して、自社の責任で決めるのが国土交通省の指針の考え方です。令和7年3月4日の「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」は、自社の費用構造(人件費、設備投資、光熱水費等の割合)を分析し、消費者物価指数のみならず、人件費の上昇率、電気代の上昇率、塗料や副資材などの材料費の上昇率等を考慮して工賃単価を設定するよう示しています。特に主要な費用項目である人件費の上昇傾向に留意すること、と書かれています。一方で、設備投資費や光熱水費を単純に価格へ上乗せするのでなく「事故車修理の費用」として負担を求めるべき妥当な範囲を検討すること、車検や法定点検、車両販売、代車貸渡などの事業を兼ねている場合にその費用まで事故車修理に転嫁するのは適切でないことにも留意が必要です。

  1. 板金塗装部門の費用を切り出す

    人件費、塗装ブースやフレーム修正機などの設備の費用、光熱水費、工場の家賃や減価償却費のうち、板金塗装の作業に使っている分を集めます。車検や車両販売の費用は分けておきます。

  2. 工賃として請求できる時間を数える

    板金塗装の作業者が1年間に実際に作業できる時間から、待ち時間や社内作業の時間を除き、見積で工賃として請求できる時間を見積もります。

  3. 1時間あたりの費用を出す

    切り出した費用(必要な利益を含む)を請求できる時間で割ると、1時間あたりに回収したい金額が出ます。これが自社の単価を考える出発点になります。

  4. 上昇率の根拠をそろえる

    前年からの人件費、電気代、塗料や副資材の上昇率を、自社の帳簿と公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額など)で確かめます。

  5. 協議用の資料にまとめる

    費用の内訳、計算方法、上昇率の根拠を1枚にまとめ、損害保険会社との協議で提示できる形にしておきます。

上の手順は、国土交通省の指針が挙げる考慮項目をもとに、計算の順序を整理したものです。どの費用をどこまで事故車修理に含めるかは工場の業態で変わるため、税理士などの専門家と相談しながら決めてください。

同業者と単価をそろえてはいけません。国土交通省の指針は、車体整備事業者や業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、工賃単価などを共同で取り決める行為は独占禁止法第3条の不当な取引制限に当たるので行わないよう明記しています。単価は、あくまで自社の費用から自社で決めます。

工賃単価の根拠資料(最低賃金・春季労使交渉・自社の費用)

工賃単価の引き上げを求めるときは、人件費や物価の上昇を示す公表資料と自社の費用の数字を組み合わせて根拠にします。国土交通省の指針は、人件費の上昇傾向を示す根拠資料として、最低賃金の上昇率と春季労使交渉の妥結額やその上昇率等の公表資料が参考になるとし、参考資料として都道府県別の最低賃金の上昇率と関連業界別の春季労使交渉の妥結額の上昇率を付けています。たとえば参考資料1(出典:厚生労働省)では、全国の最低賃金の上昇率が2020年度から2024年度までの4年間で17.0%、年度ごとでは3.1%、3.3%、4.5%、5.1%と示されています。日本損害保険協会のガイドラインも、損害保険会社は工場からレバーレートなどの根拠資料の提示を受けたら内容を丁寧に確認し、提示が無い場合は提示を依頼するという考え方を示しています。

期間全国の最低賃金の上昇率(国土交通省の指針 参考資料1)
2020→2021年度3.1%
2021→2022年度3.3%
2022→2023年度4.5%
2023→2024年度5.1%
2020→2024年度(4年間)17.0%

参考資料1の都道府県別の数字では、東京都と神奈川県が14.8%、徳島県が23.1%と幅があります。自社が所在する都道府県の数字を使うと、地域の実情に合った説明ができます。ただし公表資料だけでは、自社の単価がいくらであるべきかまでは示せません。自社の人件費が前年から何パーセント上がったか、電気代や塗料代がいくら増えたかといった帳簿の数字を並べて、初めて自社の単価の根拠になります。損保協会のガイドラインは、損害保険会社が修理工賃単価の考え方を、消費者物価指数のみならずその他の要素も考慮して定期的に見直すという取り組みの例を挙げています。工場の側でも、毎年同じ形式で資料を更新しておくと協議が進めやすくなります。

金融庁の調査でみる工賃単価の協定状況

工賃単価の実態を知る手がかりになる一次情報が、金融庁が令和6年2月に公表した「工賃単価に関する調査結果」です。日本自動車車体整備協同組合連合会に加盟する車体整備事業者などを対象に、令和5年6月から9月にかけて調査し、3,151事業者(回答率74.0%)が回答しました。2023年度の工賃単価について年度当初に損害保険会社と協定したとの回答は55.7%、協定していないが43.7%でした。協定した事業者のうち約8割弱で単価が引き上げられ、金額では「300円以上の増加」が24.2%で最多、「変更なし」が20.1%でした。引き上げ率は「3%以上」が30.3%と最も多い一方、2022年の消費者物価指数の伸び(2.5%)に満たない引き上げ率の回答が5割を超えています。改定後の単価に納得していないとの回答は68.2%でした。

調査項目(金融庁 令和6年2月)結果
年度当初に工賃単価を協定した55.7%(協定していない 43.7%)
協定した事業者の引き上げ額で最多300円以上の増加 24.2%(変更なし 20.1%)
引き上げ率で最多3.0%以上 30.3%
改定後の単価に納得できるかいいえ 68.2%、はい 19.3%
事故車修理で使う工賃単価独自に計算した単価 45.8%、損害保険会社が提示した単価 38.1%
保険を使った修理が売上の50%以上合計で約6割

納得できない理由の自由記述では、引き上げ額が低い(326件)、人件費・材料資材・光熱費等の上昇に見合っていない(278件)が多く、自社で計算した工賃単価との乖離がある(95件)、整備業務と板金業務の単価に関する不満(30件)、作業指数と実作業時間との乖離に対する不満(20件)も挙がっています。独自に計算した単価を使う事業者が45.8%いる一方、損害保険会社が提示した単価を使う事業者も38.1%いるため、自社で計算した単価を持っているかどうかで、協議での立場が変わることがわかります。

損害保険会社と工賃単価を協議するときの進め方

工賃単価の協議では、根拠資料を先に出し、相手の算定根拠の説明も求める、という順で進めるのが国と業界団体の資料が示す形です。日本損害保険協会が2025年2月に策定した「修理工賃単価に関する対話・協議のあり方にかかるガイドライン」は、加盟する損害保険会社に、工場から協議を求められた場合は対話を行い、協議を求められたことのみを理由として不利益な取扱いをしないこと、実質的な協議が可能な知識や経験を持つ者が出席すること、見解が相違する場合でも自社の考え方や引き上げ率などを丁寧に説明することを求めています。国土交通省の指針も、損害保険会社が示す見解・根拠(各費用項目がどう算定され、人件費や物価の上昇がどう反映されているか)に疑問があれば説明を求めるよう工場に示しています。合理的な説明をしても「地域相場で決まっている」「他社にもこの価格でお願いしている」といった不合理な説明で交渉が進まない場合は、国土交通省の情報提供窓口に情報を寄せられます。

  • 費用構造と上昇率をまとめた資料を、協議の前に損害保険会社へ渡す
  • 損害保険会社が提示する単価の算定根拠(人件費や物価の反映方法)の説明を求める
  • 協議の日付、出席者、提示した資料、回答の内容を記録しておく
  • 交渉による減額を見込んで初期の単価を不当に高く提示しない(国土交通省の指針 3.(6))
  • 保険を使う修理と使わない修理で、合理的な理由なく単価に差を付けない(同)

協定全体の流れやアジャスターとのやり取りは保険会社との協定とはで詳しく説明しています。

指数対応単価と板金見積システムの設定

板金見積システムでは、指数対応単価を最初に登録しておくと、選んだ作業の指数から技術料が自動で計算されます。このサイトのトップで紹介しているEGWebプロ(プロトリオス)は、初期設定画面で鈑金と塗装それぞれの対応単価を登録すると、自動的に技術料が計算される仕組みです。単価を板金と塗装で分けて持てると、金融庁の調査で不満として挙がった「整備業務と板金業務の単価」の違いのように、作業の種類ごとの費用の差を見積に反映しやすくなります。単価を改定したときは、ソフトの設定を変えた日付と、改定の根拠資料をそろえて保管しておくと、後から協定の金額を確認されたときに説明できます。過去の見積を再編集するときに、作成時点の単価のまま残るのか、新しい単価で再計算されるのかは製品によって違うため、導入前に確かめておきたい点です。製品ごとの機能は板金見積システムの選び方で比較しています。

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指数と実際の作業時間が合わないときの考え方

単価を上げても、指数の時間内に終わらない作業が多ければ、1時間あたりの実際の収入は単価より低くなります。国土交通省の指針によれば、ボルトの腐食など車両の状態が悪い場合や、降雪地での融雪剤の洗浄のような付随作業が発生する場合は、作業条件が指数の前提と異なり、作業時間が延びることがあります。そうした作業では、工場が損害保険会社に事情を説明し、実際に要した作業時間を客観的に示して請求します。同時に指針の注記では、自研指数は実作業時間のみならず一定の準備時間・余裕時間などを定めて設定されていることを踏まえ、実際の作業時間が指数と著しく乖離するようであれば、作業員の技術レベルの向上や作業場の整理整頓などの業務生産性の向上も検討するよう書いています。単価の交渉と作業の効率化は、どちらか一方で足りるものではありません。国土交通省が令和8年6月に公表したCAB工数と自研指数の比較調査はCAB工数とはで紹介しています。

まとめ

指数対応単価とは、指数(標準作業時間)に掛けて修理工賃を出す1時間あたりの工賃単価で、保険修理では損害保険会社と工場が交渉して決めます。自研センターは単価の設定には関わっていません。国土交通省の指針は、自社の費用構造を分析し、人件費、電気代、材料費の上昇率も考慮して単価を設定するよう示しており、根拠資料には最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額が参考になります。同業者と単価を共同で決めることは独占禁止法に触れるため、単価は自社で決めます。金融庁の調査では、協定した事業者の68.2%が改定後の単価に納得していないと答えており、根拠資料を毎年更新して協議に臨むことが、単価を見直してもらう近道です。

よくある質問

指数対応単価とは何ですか?
事故車の修理工賃を出すときに、指数(標準作業時間)に掛ける1時間あたりの工賃単価です。国土交通省の資料(令和8年6月)は、一般的な修理工賃の算定方法を「工賃=指数×指数対応単価」と示し、指数対応単価を損害保険会社と事業者が交渉して決定する1時間あたりの工賃(円/時間)と説明しています。
指数対応単価は自研センターが決めているのですか?
決めていません。株式会社自研センターの指数Q&Aは、自研センターは指数対応単価をはじめ、レバーレート等の工賃の設定や算定には関わっていないと明記しています。自研センターが作るのは作業時間を示す指数です。
指数対応単価の相場はいくらですか?
この記事では金額を載せていません。確認した国や業界団体の一次情報には、全国共通の相場額が示されていないためです。金融庁の調査(令和6年2月)で確認できるのは引き上げ幅で、2023年度に協定した事業者のうち「300円以上の増加」が24.2%、「変更なし」が20.1%でした。
自社の工賃単価の根拠には何を使えばよいですか?
国土交通省の指針(令和7年3月4日)は、自社の費用構造(人件費、設備投資、光熱水費等の割合)を分析し、消費者物価指数に加えて人件費、電気代、塗料や副資材などの材料費の上昇率を考慮して工賃単価を設定するよう示しています。人件費の根拠には、最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額などの公表資料が参考になるとしています。
同業者と相談して単価をそろえてもよいですか?
いけません。国土交通省の指針は、車体整備事業者や業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、工賃単価などを共同で取り決める行為は独占禁止法第3条の不当な取引制限に当たるので行わないよう明記しています。単価は自社の費用をもとに自社で決めます。
板金見積と整備・車両販売の管理は、まとめてシステム化できますか?
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参考にした一次情報

この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月5日確認)。

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