塗装の見積の出し方|補修塗装指数の計算と材料費・調色の考え方

塗装の見積は、板金の見積よりも説明を求められる場面が多い作業です。同じドア1枚でも、ソリッドか3コートパールか、取替か板金修正か、隣のパネルへぼかすかで数字が変わるからです。保険修理で使われる自研センターの補修塗装指数は、この違いを「塗り数値」「加算基礎数値」「付加数値」の3つに分けて表しています。この記事では、自研センターが公開している資料「指数テーブル使用方法 5.補修塗装指数」の計算例をたどりながら、塗装の見積の出し方を整理します。指数に入らない材料代の扱いや、調色・ぼかしの位置づけ、2024年に新設されたカラークリヤの付加数値も取り上げます。

この記事で確認した一次情報

塗装の見積は補修塗装指数と単価と材料費で組み立てる

保険修理を前提にした塗装の見積は、自研センターの補修塗装指数で作業の量を決め、それに工場の工賃単価を掛けた塗装工賃と、別に計上する塗装材料費を足して組み立てます。自研センターは指数を「事故車修理における標準的な修理作業時間を示したもの」と定義しており、指数Q&Aでは「指数は作業時間です」と書いたうえで、工具類や消耗品、材料代、産業廃棄物の処理費用を含まないと説明しています。さらに同じQ&Aで、指数対応単価をはじめレバーレートなど工賃の設定には関わっていないと明記しています。つまり指数が決めるのは時間の部分だけで、単価と材料費は工場の側で根拠を持って決める必要があります。補修塗装指数は、外板パネル、樹脂バンパ、内板骨格パネルの3つで構成され、それぞれに溶剤系塗料用と水性塗料用の2種類があります。

見積の要素中身決めるのは
補修塗装指数塗り数値+加算基礎数値+付加数値(外板パネルの場合)自研センターの指数テーブル
塗装工賃補修塗装指数に工場の単価を掛けた金額単価は工場(保険修理では協定で調整)
塗装材料費塗料、シンナー、マスキング材などの材料指数に含まれないため工場が別に計上

単価の決め方は指数対応単価(レバーレート)とはで、指数そのものの成り立ちは自研センター指数とはで詳しく扱っています。

外板パネル補修塗装指数の3つの数値

外板パネル補修塗装指数は、塗り数値、加算基礎数値、付加数値の3つを組み合わせて出します。自研センターの資料によると、塗り数値は外板パネルをソリッド塗装する作業にかかわる時間をもとにした車種別・パネル別のテーブルで、取替パネルは単体塗りと複数塗り、修正パネルは1/1、1/2、1/3塗装の区分があります。加算基礎数値は塗り数値と必ずセットで使い、塗装面積に関係なく発生する準備、調色の作業と、ソリッド以外の塗膜で増える作業(塗膜加算)からなります。塗料の種類、塗膜の種類、補修パネル枚数で値が変わり、1作業(1車両)につき1回選びます。付加数値は車種や塗料に共通の数値で、防錆ワックス、ブース加算、2トーン加算、カラークリヤなど9種類があり、必要なときだけ足します。塗り数値はパネルの枚数分を足し、加算基礎数値は1回だけ、付加数値は作業に応じて、という足し方の違いを押さえておくと、見積の数字を説明しやすくなります。

数値含まれる作業足し方
塗り数値パネルのソリッド塗装作業全般(取替パネルは下処理・シーリングを含む)塗装するパネルごとに足す
加算基礎数値準備、調色、塗膜加算(ぼかし塗装・クリヤなど)、3コートパールはブース作業も1作業(1車両)につき1回
付加数値防錆ワックス、低隠ぺい性塗色、2コートソリッド、カラークリヤ、ブース加算など9種類該当する作業があるときだけ足す

資料の注記では、取替パネルの塗り数値に下処理とシーリング、修正パネルには下処理が含まれます。指数Q&Aによると、表側のプラサフ塗装は含みますが、パネル裏面を塗装する際のプラサフ工程は指数に含まれていません。

補修塗装指数の計算手順(ドア1枚の例)

ドア1枚を新品に取り替えて塗装する場合の補修塗装指数は、塗り数値を選び、塗膜と塗料と枚数で加算基礎数値を選び、必要な付加数値を足す、という3段階で出します。自研センターの資料の計算例では、左フロントドア1枚を取り替えて溶剤系塗料でソリッド塗装すると、塗り数値2.5(取替パネル・単体塗)に加算基礎数値1.5を足して、外板パネル補修塗装指数は4.0です。同じドアを2K塗料でメタリック塗装すると、加算基礎数値が2.8になり指数は5.3、3コートパールでは加算基礎数値4.0で指数は6.5になります。塗る面積は同じでも、塗膜の種類で加算基礎数値が大きく変わるのがわかります。なお、ここで使った数値は資料が例として示した車両のテーブルで、実際の見積では対象車種の指数テーブルの値を使います。

  1. 塗装するパネルと修理方法を決める

    取替か板金修正か、修正なら1/1、1/2、1/3のどの範囲を塗るかを決めます。修正パネルを単体塗りする場合は、複数塗りの数値に0.4を加算する注記があります。

  2. 塗り数値を拾う

    車種別の指数テーブルから、パネル名と区分に合う塗り数値を選び、塗装するパネルの数だけ足します。2枚以上を塗るときは取替パネルの「複数塗」の列を使います。

  3. 加算基礎数値を1回選ぶ

    塗膜(ソリッド、メタリック、2コートパール、3コートパール)と塗料(速乾、2K)、塗装するパネル枚数で決まる値を1車両につき1回選びます。ぼかし塗装をするだけのパネルは枚数に数えません。

  4. 付加数値を足す

    防錆ワックス、低隠ぺい性塗色、ブース加算など、実際に行う作業に当たる付加数値だけを足します。

  5. 工賃と材料費に分けて金額にする

    合計した補修塗装指数に自社の単価を掛けて塗装工賃とし、材料費は別の行で計上します。

例(左フロントドア1枚・取替)塗り数値加算基礎数値補修塗装指数
ソリッド(溶剤系・速乾)2.51.54.0
メタリック(溶剤系・2K)2.52.85.3
3コートパール(溶剤系・2K)2.54.06.5

2枚を塗る例も資料に載っています。左フロントドアと左リヤドアを取り替えて2コートパール(2K)で塗る場合、塗り数値は複数塗りの1.9と1.7で3.6、加算基礎数値はパネル枚数2枚の2.9で、指数は6.5です。3コートパールなら加算基礎数値が4.2になり、指数は7.8です。2枚目からは加算基礎数値が少ししか増えないため、1枚ずつ別々に計算するより指数は小さくなります。

調色とぼかし、ブース作業の扱い

調色の時間は、補修塗装指数では加算基礎数値の中に入っています。自研センターの資料では、加算基礎数値の内訳をソリッドが「準備+調色」、メタリックと2コートパールが「準備+調色+塗膜加算」、3コートパールが「準備+調色+塗膜加算+ブース作業」と整理しています。塗膜加算は、コート数が増える分の作業と、隣接パネルへのぼかし塗装にかかわる作業です。メタリックや2コートパールでは、隣接パネルへカラーベースをぼかし塗装し、クリヤをブロック塗装するのが一般的と資料は説明しています。3コートパールは、カラーベースに加えてパールベースのぼかし塗装が増え、プッシュプル型ブースの使用が前提になっています。調色だけの時間の内訳は自研センターから公表されていないと、プロトリオスが運営するBSRwebのQ&Aで回答されています。見積担当がやるべきことは、調色の手間を別の行で足すことより、塗膜の種類を正しく選ぶことです。

  • ぼかし塗装だけを行う隣接パネルは、加算基礎数値のパネル枚数に数えない。
  • 2コートパールはメタリックと同じ作業工程のため、加算基礎数値も同じ値になる。
  • ブース加算は、2024年3月号の改定で「使用する塗料によらず、ブースを使用して塗装した場合、1回加算する」に変わった。
  • 3コートパールと高機能塗装は加算基礎数値に、樹脂バンパ補修塗装指数は数値の中にブース作業が含まれるため、別にブース加算を足さない。

色を確かめる手間が大きい車の伝え方

塗膜の選び間違いは、指数の差に直結します。車体の塗色が3コートパールなのにメタリックで計算すると、ドア1枚の例でも加算基礎数値が2.8と4.0で1.2違います。受付の段階でカラーコードと塗膜の種類を記録し、見積の根拠として写真と一緒に残しておくと、協定のときに説明しやすくなります。

付加数値とカラークリヤの新設(2024年3月)

付加数値は、塗り数値と加算基礎数値だけでは表せない作業があるときに足す数値で、自研センターの資料には9種類が車種共通で設定されています。ドアサッシュ黒塗り、ボデーストライプ、ボデーシーリング、防錆ワックス、低隠ぺい性塗色、2コートソリッド、カラークリヤ、ブース加算、2トーン加算です。自研センターニュース2024年3月号では、外板パネルに適用する付加数値「カラークリヤ」が新設されました。運用方法は、3コートパールで指数を算出したうえで付加数値カラークリヤを加算し、塗装する外板パネルの枚数にかかわらず1回だけ加算します。数値は溶剤系の取替パネル・修正パネルで、クォータパネルが2.1、クォータパネル以外が0.9、水性ではそれぞれ2.4と1.2です。樹脂バンパでは、バンパ塗色がカラークリヤの場合に3コートパールの数値へ溶剤系で0.1、水性で0.2を加算します。この改定は、既に指数テーブルが発行された車種も対象です。

付加数値適用する場面(資料の説明)
ボデーシーリング板金修正パネルでシーリング塗布が必要な場合
防錆ワックススプレーガンやエアゾールでパネル内側に防錆ワックスの塗布が必要な場合
低隠ぺい性塗色カラーベースの下に下色を塗装する必要がある場合
2コートソリッドソリッドのカラーベースの上に通常のクリヤ塗装をする場合
カラークリヤメタリックのカラーベースの上にカラークリヤを塗装する場合
ブース加算ブースを使用した場合に1回適用
2トーン加算ベース色のパネルに2トーン塗装をする必要がある場合

資料の付加数値の計算例では、左フロントドアの取替で2コートパール塗装、ドア下部内側に防錆ワックスを塗布し、低隠ぺい性塗色でブースを使う場合に、防錆ワックス0.1、低隠ぺい性塗色0.5、ブース加算0.5の合計1.1を付加数値として足し、塗り数値2.5と加算基礎数値2.8に合わせて補修塗装指数は6.4です。付加数値は漏れやすい項目なので、作業指示書の段階でチェック欄を作っておくと拾い忘れが減ります。

樹脂バンパと内板骨格パネルの補修塗装指数

樹脂バンパの補修塗装指数は、外板パネルと別のテーブルで、損傷に応じた4種類の作業が設定されています。自研センターの資料によると、取替は補給部品を全面塗装する作業で、部品が素地やプライマ塗装の状態で補給される場合に適用します。外傷修正 小はパテ仕上げで直せる傷の長手方向10〜20cm、外傷修正 大は21cm以上、変形修正は外傷修正 大の損傷に変形が加わり加熱修正とパテ仕上げで直せるものが対象です。それぞれフロントとリヤ、塗膜の種類ごとに車種別の数値があり、ボデーと同色か別色か(一色・二色)でも分かれます。バンパは損傷の頻度が高い部位なので、傷の長さを測って写真に残すだけで、外傷修正 小と大のどちらで計上するかの根拠になります。内板骨格パネルにも専用の補修塗装指数があり、ラジエータサポートの取替やリヤフロアの板金修正などの計算例が資料に載っています。

塗装材料費の計上と見積システムでの扱い

塗装材料費は補修塗装指数に含まれないため、見積では工賃とは別の行で計上します。自研センターは指数Q&Aで材料代を含まないと明記しているだけで、材料費の計算方法は示していません。材料費の出し方は工場ごと、保険会社との協定ごとに決まる部分が大きく、ここで金額の目安は示しません。大事なのは、塗料の使用量や調色の失敗分をどう見込んでいるかを、自社の中で説明できる形にしておくことです。板金見積システムを使うと、塗装の計算は大きく楽になります。たとえばコグニビジョンのコグニセブンは、入力した外板パネルと修理方法が塗装画面へ反映され、板金したパネルの塗装範囲などを選ぶと塗装工賃が自動で計算されます。ジョーシン・シャックスのEIMSⅣには、板金料金と塗装料金の概算計算機能があり、条件を選ぶと金額を自動計算すると公式サイトに書かれています。材料費の計上方法がシステムでどう設定できるかは、メーカーごとに確認してください。

塗装の見積でよく起きるのは、付加数値の拾い漏れと、塗膜の選び間違いです。システムの作業確認機能や付随作業の漏れ確認機能を使うと、拾い漏れに気づきやすくなります。製品ごとの機能の違いは板金見積システムの選び方で比べています。

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塗装の見積を手計算やExcelで作っていて、付加数値の漏れや塗膜の選び間違いが気になっている工場は、板金見積システムの導入を検討する時期です。どのシステムが自社の車種構成や保険修理の比率に合うか、専門家が無料でご相談に応じます。

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よくある質問

補修塗装指数に塗料などの材料代は入っていますか?
入っていません。自研センターの指数Q&Aは「指数は作業時間です」として、工具類や消耗品、材料代、産業廃棄物の処理費用を含まないと説明しています。補修塗装指数の使用方法の資料でも、計算例のたびに「補修塗装指数には材料代は含まれません」と注意書きがあります。見積では、工賃とは別に塗装材料費の行を立てて計上します。
調色の時間はどこに含まれますか?
加算基礎数値に含まれます。加算基礎数値は、塗装面積に関係なく発生する準備と調色の作業、ソリッド以外の塗膜で増えるぼかし塗装などの作業(塗膜加算)で構成され、1作業(1車両)につき1回選びます。パネルごとに調色を足す計算にはしません。調色時間だけの内訳は自研センターから公表されていないと、BSRwebのQ&Aで回答されています。
ぼかし塗装をした隣のパネルは、塗装枚数に数えますか?
数えません。自研センターの資料は、ぼかし塗装を施すパネルは加算基礎数値のパネル枚数に数えないとしています。メタリックや2コートパール、3コートパールで隣接パネルへぼかす作業は、加算基礎数値の塗膜加算に含まれているためです。
ブース加算はいつ足しますか?
自研センターニュース2024年3月号で適用条件が「使用する塗料によらず、ブースを使用して塗装した場合、1回加算する」に変わりました。3コートパールと高機能塗装は加算基礎数値に、樹脂バンパ補修塗装指数は数値の中にブース作業が含まれるため、別にブース加算を足しません。
塗装の工賃の単価(指数対応単価)は自研センターが決めていますか?
決めていません。自研センターの指数Q&Aは、指数対応単価をはじめレバーレートなど工賃の設定や算定には関わっていないと明記しています。単価は工場が自社の原価から決め、保険修理では保険会社との協定で話し合います。
板金見積と整備・車両販売の管理は、まとめてシステム化できますか?
板金見積ソフトで作った見積は、請求・入金・顧客管理と別に管理すると二重入力が増えます。自動車整備システム(自動車整備ソフト)や車両販売システム(車販ソフト)と連携できるかを確認しておくと、見積から請求までを1か所で扱えます。整備システム 比較や整備ソフト おすすめの情報を見るときは、整備ソフト 安いかどうかだけでなく、整備システム リースなしで始められるかも確かめてください。

参考にした一次情報

この記事は次の一次情報をもとに作成しています(2026年10月5日確認)。指数の数値は資料が示した例のもので、実際の見積では対象車種の指数テーブルを使ってください。

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